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9月25日の「気まぐれ空模様」 ~すぐ死ぬんだから~

すぐ死ぬんだから/内館 牧子

「終わった人」に続いて、「すぐ死ぬんだから」とは、いかにも著者が好んでつけそうなタイトルだこと。脚本家として30年間、第一線で活躍してきた著者だけれど、近年では小説の域にも手を広げ、その仕事ぶりが凄まじい。◆もともと、文章のうまい人だからな、とは思うものの、実は彼女の作品、たまに雑誌のコラムに目を通す程度でほとんど読んだことがない。テレビドラマはよく観ているけれどね。というわけで、この度、初めて手に取ったのがこの作品でした。◆前半、とっぷり後期高齢者である主人公ハナが、老人は斯くあるべきだという持論を延々と展開してくれる。これって、きっと作者の理想論というか、思い描く老後のあるべき姿なんだろうな、というのが、もう、行間からはみ出して欄外にまで溢れかえっている。ああ、うっとうしい、読むの、やめようかな。◆それが、半ばに差しかかる前のあたりから、物語は急展開。ある、大きな出来事が起こったのをきっかけに、俄然、面白くなってくる。◆さすがに脚本家の手による小説だけあって、登場人物の言葉で描写されている部分が多いのだけれど、主人公の言動が結構癇に障る。それだけ生の声、上っ面だけではない本音で語られている、それが著者の技量だと思う。◆主人公と同年代の人がハナの生きかたをどう思うか興味深いし、また、自分が、そのときになって、どこまで舵取りができるかわからないけれど、なかなか、痛快な小説でした。

★★★★☆

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<講談社BOOK倶楽部/内容紹介>78歳の忍(おし)ハナは夫岩造と東京の麻布で営んでいた酒店を息子雪男に譲り、近所で隠居生活をしている。年を取ることは退化であり、人間60代以上になったら実年齢に見られない努力をするべきだ、という信条を持つハナは美しさと若さを保っており、岩造は「ハナと結婚してよかった」が口癖の穏やかな男だ。雪男の妻由美には不満があるが、娘の苺や孫の雅彦やいづみにも囲まれて幸せな余生を過ごしているハナだったが、ある日岩造が倒れたところから、思わぬ人生の変転が待ち受けていた。人は加齢にどこまで抗えるのか。どうすれば品格のある老後を迎えられるのか。『終わった人』でサラリーマンの定年後の人生に光を当てた著者が放つ新「終活」小説!